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アンカーポイントと緊張線・引っ張りと圧縮は枕でよくわかる『着衣とそのシワ』
本記事は書籍『シワの描き方マスターガイド リアルで美しいシワ表現を描く』の抜粋記事です。
ホビージャパン様から、ハリウッド映画のストーリーボードアーティストとして活躍するKelly Gordon Brine(ケリー・ゴードン・ブライン)先生が、シワの描き方を完全ガイドした1冊の一部をご提供いただきました。今回はシワのでき方を理解するポイントについて紹介していきます。
アンカーポイントと緊張線
人がポーズをとるとき、体の手足は衣服の布をさまざまな方向に引っ張ります。このとき、布を引っ張る体の一点がアンカーポイントで、人体の2つのアンカーポイントを結ぶ、布がまっすぐにピンと張った線が緊張線です(図9.4)。 通常、緊張線は人体上の2点間を走っていますが、衣服を引き下げる重力が、2つ目のアンカーポイントとなることもあります。
服を着たモデルや写真資料を見るとき、あるいは頭の中で人物を想像するとき、シワを単純化する良い方法は、衣服の中で一番強い引っ張りの起点になっているアンカーポイントを見つけることです。 どこがアンカーポイントかをはっきりさせるには、描く人物の動作を分析してみます。衣服に緊張線を数本描けば、たちまち動きがあると見えるようになり、これを元にしてより細かいシワを描き加えればいいのです。緊張線がシワのように見えるのは、緊張線と交わる方向に圧縮がかかってシワができている場合だけです。緊張線の周囲は、圧縮されていない限り平らなままです。
引っ張りと圧縮は枕でよくわかる
シワは圧縮によってでき、引っ張るとシワはなくなります。 シワを描くときは、服が体の上に直接滑らかに被さっている部分、重力で垂れ下がっている部分、強く引っ張られている部分、人物の動きで圧縮されて束ねられている部分が、それぞれどこなのかを考慮しなければなりません。
シャツやブラウスの身頃(胴体部分)は、着ている人の胴体を覆っている大きな円筒形の部分です。肩を動かしたり、背中を曲げたりすると、シャツにシワができます。枕を曲げたりねじったりしたときの主なシワをよく見てみると、人物のさまざまな動作でシャツのどこにシワができるかがわかります。
枕の位置を変えるたびに、枕にあらわれるシワの細かい部分は変化しますが、シワの大まかな形は予測できます。主なシワの簡単で典型的なでき方をいくつか覚えておけば、想像で描いた人物の胴体に当てはめることができます(図5)。
曲げたりねじったりしていない枕には、シワはほとんどありません。枕を縦方向に二つ折りにすると、横方向のシワができます。枕の側面を中央に向けて引っ張ると、水平方向に圧縮され縦方向のシワができます。枕をひねると、離れていった対角線上の2つの角の間は布が強く引っ張られますが、近づいていく残りの2つの角の間は圧縮され、剪断ひだができます。
枕の側面にシワができることもあります。枕の側面は、表と裏の広い面に比べて、より稜線に似た形になっています。この稜線のひとつが、枕の上部の角が下向きに押されて圧縮されると、稜線はジグザグシワやV溝シワに変化しやすいです。