POSEMANIACS

Русский


<< Articles

衣服の構造 『着衣とそのシワ』

衣服の構造 『着衣とそのシワ』

本記事は書籍『シワの描き方マスターガイド リアルで美しいシワ表現を描く』の抜粋記事です。
ホビージャパン様から、ハリウッド映画のストーリーボードアーティストとして活躍するKelly Gordon Brine(ケリー・ゴードン・ブライン)先生が、シワの描き方を完全ガイドした1冊の9章をご提供いただきました。今回は衣服の構造について紹介していきます。


衣服がうまく描かれていると、人物はより魅力的で本物らしく見え、ポーズや動作が際立ちます。着衣のシワを描くには、シワがどうやってできているかを見抜くことや、人体解剖学の知識、そして服のデザインと構造に関する基本的な理解が必要です。

これまでの章では、さまざまな種類のシワと、人体のメカニズムについて探求してきました。この章では、これらの知識を用いて、人体に衣服を着せてみましょう。 人間が身につける衣服はさまざまですが、人体のつくりは誰でも同じで、衣服は人体の形に合うように作られているものなので、衣服のシワやひだには「普通はこうなる」という幾何学的形状があるものです。 衣服の種類、スタイル、布地によって細かい違いはありますが、同じような状況下では、布地には同じようなシワができます。

しかし、シワを自分なりに工夫して表現することはいくらでもできます。例えば、ジグザグシワの描き方には、数え切れないほどさまざまな方法があり、しかもどれでも本物らしく見せることができます。この章では、最も重要なシワの標準的なあらわれ方を主に扱いますが、スタイル、質感、フィット感、ライティングを変えたり、小さな二次シワを追加して、より豊かで細やかに見せるなど、さまざまにカスタマイズすることができます。

衣服の構造

衣服は、特に大きな動作をしていない姿勢に合わせ、そこに一定の可動域で自由に動けるような遊びを十分にもたせてデザインされています。 また、着用する人の体のサイズもきちんと考慮されていますし、わざと部分的に布を余らせたスタイルの衣服もあります。実用的な理由であれスタイルであれ、余分な布があればシワはできますが、それは特にポーズをとっていなくてもシワができる部分です。例えば、着ている人の膝が曲がっていなくても、ひだができるデザインのドレスはあります。胴体や腕、脚の動きによって、布はある方向には引っ張られ、ある方向には束ねられるので、シワが変化し、また新たなシワができます。自分が着ている衣服をよく観察すれば、いろいろなことが学べます(図9.1)。

9.1 人物の体の大きさとプロポーション、衣服のスタイル、裁断のしかた、どの程度体にフィットするデザインか。そして人物の動作は、すべて衣服のシワに影響を与える

衣服の多くは、平らな布を縫い合わせて作られています。 部分を縫い合わせて角度を作り、胴体や腕、脚の曲がったり先端ほど細くなったりしている形に合わせて衣服を作ることができるのです。縫い目の部分で布はいくらか硬くなりますが、普通は、それによってシワができなくなるほどではありません。

袖、パンツの脚、スカート、ドレス、そしてシャツ、ジャケット、コートの胴体部分は、筒形か円錐形です。 この筒や円錐を作るために使われる布は、普通はかなり柔軟で、着る人の体より大きく作り、自由に動けるようにしているものです。これにより、座る、歩く、手を伸ばすなど、さまざまな動作が可能になります。デザイナーが体の形を強調したいと思い、タイトなデザインにする場合は、体に密着していても関節が曲げにくくならず、どんなポーズでもとることができるような、伸縮性のある生地を使います。伸縮性のある生地で作られた衣服は、シワがあまりできないのが特徴です。

もし、衣類を構成する筒状のパーツが互いに縫い合わされておらず、パーツのつなぎ目部分が存在しないとしたら、それぞれのパーツの間には隙間ができ、シワはほとんどできないでしょう。シワは、主にパーツが縫い合わされ、つなぎ目ができている部分で布が引っ張られたり、押されたりすることでできます。 ここでは、腕や脚が動くと、つながっているパーツがお互いに引っ張り合います。

衣服は、入念にデザインされたパターンに従って正確に裁断された、平らな布片から始まります(図9.2)。これを縫い合わせることで、衣服の立体的な形が出来上がります。体にうまく合った衣服は魅力的で、それぞれの衣服の用途に応じて意図された通りに、腕や脚を十分動かすことができます。例えば、体を動かす仕事のために着用する衣服は、ゆったりとしたものでなければなりません。

9.2 衣服は、スタイル、着用者の体型、および腕の上げやすさを左右する袖付けの角度など、衣服の使用目的に応じた実用的な要素を考慮してデザインされる

衣服にできるシワの数は、衣服のフィット感によって大きく変わります。 タイトな服は、布が体に密着し、その輪
郭に沿うことになるため、小さなシワが多くなる傾向があります。ゆったりとした服の場合、布が自由に垂れ下がる
部分には大きなひだがいくつかできるだけですが、布が圧縮されて束になった部分にはシワやひだが多くなります(図9.3)。

9.3 タイトな衣服は、体の輪郭により密着することになるので、小さなシワがたくさんできる。ゆったりとした衣服には、大きなひだが重力だけで垂れ下がっている部分もあるが、圧縮されているところではたくさんのシワやひだができる

 同じ袖でも、シャツとドレスジャケットでは異なる構造になっています。 シャツの袖は、衣服の胴体部分から外側を向くようになっています。これは、腕がどんな方向へも自由に動かせるようにするためですが、腕を体の横に下ろしたときには、腕の下にシワができます。一方、ジャケットの袖は、身頃の脇に沿うように斜めに傾いています。ですから、腕を下ろしたときには腕の下にシワができず、滑らかでフォーマルな印象になります。しかし、袖にゆとりがないため腕を上げにくくなります。腕を上げると、腕の下側の布地は長さが足りず窮屈になり、袖が引っ張られて短く見え、ジャケットの肩が盛り上がり、上腕の上部にシワができてしまうのです。

縫い目やポケットの部分でシワが止まっていることがありますが、これは布の厚みが2倍になっていてシワができにくいからです。ポケットや縫い目は元々の形が変わりにくいため、その分周囲の部分の布にはシワがより多くできるかもしれません。シワがポケットの角まで伸びて、そこで終わっていることはよくあります。


以上、ホビージャパンの技法書より『シワの描き方マスターガイド リアルで美しいシワ表現を描く』(著: Kelly Gordon Brine(ケリー・ゴードン・ブライン))の抜粋記事でした。 Amazonなどで絶賛発売中です。
シワの描き方マスターガイド リアルで美しいシワ表現を描く by Kelly Gordon